宇宙交流 in ハイエース
最近の子はしっかり不審者に対する教育を受けていることもあり、
ウチの子どもたちも非常に気をつけているので、私はホント驚くばかりであります。
そんな慎重な子どもたちとは違い、
私はかつて一度だけ、
今考えたら超絶デンジャラスなことに、
知らないおじさんのハイエースにうっかり乗ってしまったことがあるのです。
ハイエースに乗っちゃったら超デンジャラスだよ。
子どもが見知らぬハイエースに乗り込んだことを知ったら、
私は卒倒しちゃうに違いない。
じゃあなんで私は乗っちゃったのかってことなんですが、
そもそもそこに至るまでにはMさんの説明をしないといけません。
人生の前半部分で、おそらく最も影響をうけた人物。それが美容師のMさんです。
就学前から二十歳まで、彼女にお世話になりました。
で、このMさんがホントに面白い人で、小学生だった私に
宇宙人からスピルバーグに宛てた手紙があることとか、
アブダクション(宇宙人による連れ去り)とか
そういうことを毎度熱心に語ってくれたのです。
一時は幽霊にハマっていて、
気功の呼吸法をマスターすれば幽霊が見られるようになるよ!と説得され、
私は彼女にならって1年ほど
せっせと幽霊が見られるようになるための
呼吸法を続けました(健気!)。
私は全然見られるようにならなかったけど、
彼女は幽霊が見られるようになったとかで、
「昨日はウチの隣の屋根の上で宴会してたよ」とか教えてくれるのです。
彼女が語ると本当にリアルで、そんなことはあるまいと思いつつ、
その世界を堪能することができたんですよ、これが。
一方で私は小学生の時分から雑誌Newtonの愛読者でもあったわけです。
昔はよく古代遺跡の特集なんかもしていて、
オーパーツの写真が載っていたりしたのです。
彼女が教えてくれる謎の宇宙人の話と、私の仕入れたNewtonの情報を
2人で分析するのが探偵ごっこをしているようでワクワクしました。
トンデモワールドも、サイエンスワールドもどっちも大好きだったのだけど、
当時、トンデモワールドは「神々の指紋」という、古代文明と宇宙人を結びつけた
疑似科学本が売れまくっていたこともあって、
いつになく地元の本屋のトンデモ本の種類が豊富でした。
狭い本屋を圧迫していたトンデモ本は、サイエンスコーナーを侵食し始めていたので
どっちも見たい私には大変好都合で、
よくトンデモ&サイエンスコーナーを物色していました。
ある夏の日こと、いつものように面白い本はないかと本棚を見ていたら、
知らないおじさんが声をかけてきました。
「君、こういう本に興味あるの?」
おお、危険な展開です。
でも大変素直な私は
「はい!とっても興味があります!」と答えていました。
おじさんは嬉しそうに「宇宙人って信じてる? ちょっと面白い物みたい?」と
誘ってくれました。当然見たいです。当たり前です。
お店の前におじさんのハイエースがとめてあり、
私は中に入りました。
おじさんは後部座席の奥から段ボールをひっぱりだしてきて、
宇宙人と交信するために作ったポスターとやらを見せてくれました。
ピンクの後光輝く宇宙人の絵でした。
月に1度仲間と集まって宇宙人との交信を試みているそうです。
おじさんは名刺とポスターをくれました。
そしてMさんと同じように、宇宙人の存在を力説してくれました。
「君は未成年だし、夜だと危ないからね、
お家の人の許可がとれたら、是非会合に参加してください!!!」
握手を交わして別れました。
当然両親が宇宙人との交信をするために隣の隣の隣の市にまで出かけていくことに
賛成するわけもなく、おじさんとはそれきりです。
この話をしたら私の100倍くらいMさんは興奮していました。
おじさんと通じるものがあったんだろうか……。
そんな経緯もあり、私は宇宙人と交信するひとは
そんなに悪い人ではない思っているのです。
まあ、子どもがハイエースに乗ってたら、怒髪だけど。